待ったなし!介護事業者の【経営情報報告義務化】、2025年1月開始

2025年1月から、日本のすべての介護事業者に対し、経営情報の報告が義務付けられます。この新制度は、介護事業者の経営情報を「見える化」することで、介護サービスの質を向上させ、利用者にとって選びやすい環境を整えるものです。この制度の概要、提出内容、運用スケジュール、公開内容などを整理し、わかりやすく解説します。

厚労省の目的

今回の報告義務化の背景には、少子高齢化や介護現場の人材不足、新興感染症などの経営リスクが挙げられます。厚生労働省は、次のような目的を掲げ、この制度を導入しました。

  • 利用者の選択支援:経営情報をわかりやすく公開し、利用者が事業者を選ぶ際の参考にできる環境を整備。
  • 業界の透明性向上:介護業界全体の信頼性を高め、社会保障制度の持続可能性を強化。
  • 事業者への支援:収集したデータをもとに、適切な経営指導や支援策を講じる。

提出内容

報告義務対象となる経営情報は、以下のように定められています。

1.事業所の基本情報:

法人名、所在地、会計年度末日、提供サービスの種類など

2.収益・費用の詳細:

収益(施設介護料収益、居宅介護料収益など)
費用(給与費、減価償却費、水道光熱費など)

3.職員情報:

管理者、看護師、介護福祉士など職種別の人数と給与

4.その他:

医療・障害福祉サービスを併用している場合の収益・費用データ

なお、小規模事業者や特定の事情がある事業者については、報告が免除される場合もあります。

提出方法

報告は、厚生労働省が提供する「介護事業財務情報データベースシステム」を使用して行います。

オンライン報告:

管理者、看護師、介護福祉士など職種別の人数と給与

・インターネット上でデータ入力またはCSV形式のファイルをアップロードして提出。
・誤りがあった場合には修正再提出が可能。

必要な準備:

・GビズID(gBizIDプライム)のアカウントが必要。未取得の場合は早めに申請してください。

作業効率化:

・会計ソフトとの連携も推奨されており、CSV出力機能を利用して効率的に報告を行えます。

運用スケジュール

この制度は、以下のスケジュールで運用されます。

  1. 2024年秋:厚生労働省が操作マニュアルを提供。事業者は事前準備を進める必要があります。
  2. 2025年1月:報告制度が正式に開始。会計年度終了後3ヶ月以内の報告が義務付けられます。
  3. 初年度特例:2025年度内に終了する会計年度分の報告については、2025年度末までの延長措置が適用されます。

データの一般公開

収集された経営情報は、一部が一般公開されます。これにより、利用者が事業者を選ぶ際の参考情報として活用できる環境が整います。

公開の目的:

公開データは、利用者が施設のサービス内容や経営状況を比較・検討するための指標となります。また、介護事業者同士の健全な競争を促進し、業界全体のサービス向上を目指します。

公開内容:

公開されるデータは、以下のように整理されます。

  • 基本情報:事業所名や所在地、サービス内容
  • 分析結果:収益・費用の概要や経営状況の傾向
  • 人員構成:サービスを提供するための体制情報

ただし、プライバシー保護や競争上の観点から、詳細な収益構造や経営上の機密情報は公開されません。

公開方法:

公開されるデータは、以下のように整理されます。

データは次の方法で一般向けに提供されます。

  • 厚生労働省のウェブサイト:年次報告や統計データが公開
  • 都道府県のウェブサイト:地域別情報を補足的に提供

罰則規定

報告を怠った場合や虚偽の情報を提出した場合には、以下の罰則が適用される可能性があります。

  • 行政指導:都道府県知事からの是正指導
  • 罰則:介護保険法に基づく罰金や営業停止命令

まとめ

2025年1月施行の経営情報報告義務化は、介護業界における透明性を高め、利用者にとって信頼性のあるサービス選択を可能にします。一方で、事業者にとっては新たな作業負担が伴うため、早期準備が不可欠です。特に、GビズIDの取得やシステムの使用方法の確認は優先事項となります。正確な報告を行うことで、事業者と利用者の信頼関係を構築し、業界全体の発展に寄与していきましょう。

参考資料:

介護事業財務情報データベースシステム
・PDF資料「財務諸表義務化」